いいものリレー

4人めのゲスト
tupera tupera
亀山達矢さん、中川敦子さん
プロローグ川と西日と暮らす、家。

「いいものリレー」、
イラストレーターの山本祐布子さんのバトンは、
tupera tuperaの亀山達矢さん、中川敦子さんに
つながりました。
絵本やイラストレーション、工作、舞台美術や空間デザイン、
アートディレクション‥‥などなど、
さまざまなシーンで活動しているおふたりのおうちは、
京都、賀茂川のほとりにあります。
アトリエも、ご自宅のスペースも、
おふたりのお仕事のように、あかるくたのしい場所でした。

ゲストキュレーターtupera tupera(ツペラツペラ)
亀山達矢と中川敦子によるユニット。
絵本やイラストレーションをはじめ、
様々な分野で幅広く活動。
絵本の著書は『しろくまのパンツ』や
『かおノート』などヒット作多数。

賀茂川を眺めながら、仕事も、暮らしも。

――
こんにちは。
わー、窓が広くて、気持ちがいいですね。
そこに、デスクが並んでいて。
中川
アトリエはここなんです。
机の並びは、制作中は、
縦だったり横だったりするんですけど。
亀山
本来は、こうなんです。
中川
川のほうを向いて横並びでやるのが
いつものかたち。
――
ああ、お2人で並んで外を向いて作業されるんだ。
亀山
そうですね。
中川
描きかけの絵があるとか、
絵具とかインクとかが置きっぱなし、みたいな、
なんか作業中のものが机にあるわけじゃないから、
いわゆるアトリエみたいな感じはなくて。
――
机の上には何もない。
中川
私たちの仕事は切り貼りなので、
その都度、素材とかはさみとかを出してきて、
マットの上で作業するんですけど、
一回終わると、片付けて、下も掃き出して。
――
なるほど。
毎回、きれいにかたづけるんですか?
亀山
うん。ぼくの気質で。
夕方に、完全にリセットします。
――
へぇ、毎日ですか?
亀山
夜は、仕事しないので。
夕方の4時ぐらいにピチッと。
中川
なので、あんまりその痕跡がない。
亀山
机を動かして、それぞれ別のことをやってたり、
あとまぁ、机くっつけて一緒のことをやってたり。
いろいろですね。
――
外を向いているっていうのは、
気持ちがよさそうですね。この借景だし。
亀山
東京のアトリエが、早稲田のグラウンド沿いだったんです。
賃貸だったんですけど、
グラウンドを借景にしてる物件だったので。
――
それもよさそうです。
亀山
今回も、そこに引っ張られたみたいな。
賀茂川は、好きですね。
昔からずっと川の近くに住んでいて。
最初は伊勢の勢田川っていう川沿いだった。
――
川に近い人生ということでしょうか。「亀」山さんだから。
亀山
はい。ずっと海と川の近くです。
山はあんまり好きじゃないですね、「山」もついているけど。
――
そうでしたか。
こちらの引き出しは、何が入ってるんですか?
お宝がいっぱいありそうです。
中川
下まで全部、紙が入ってます。
亀山
この引き出しは設計して作りました。
――
そこに積まれている本は、資料ですか?
亀山
敦子のおじさんがテキスタイルをやってて。
もう仕事を辞めたので、
参考にしてた資料とかをいただいたんですよ。
神保町など自分たちが古本屋さんで買ったものもあります。
――
へぇぇ。
中川
父の兄弟なんですけど、
京都が繊維関係でいい時代だった頃に、
テキスタイルをずっとやってた。
ひと昔前の布とか図案とかの資料があって。
おもしろいんですよ。やっぱりすごく。
――
なるほど。
中川
図案の模様の一部が、例えば目玉に見えるとか。
自分たちが意図しないアイディアが
本を見ながら浮かぶことがあって、おもしろいです。
亀山
tupera tuperaは布を切ってパッチワークしたりとか
布小物から活動をスタートしてるんで、
コラージュの材料としてページをめくりながら、
インスピレーションも受けています。
――
きっと、年代ものの、なかなか手に入らないものですね。
あちらの本棚は‥‥
もしかして、上が屋根裏部屋みたいな、ロフトみたいな?
中川
そう。なんかこういう、
意味のないスペースを作りたかったんです。
亀山
でも、あんまり行かない。
昼寝するしかない所なんです。
中川
でも、意外と寝ないんです。
そして、子どももそんなに来ない。
亀山
誰も行かないです。
――
意味がなくて、昼寝するしかないけど、
誰も寝ない。お子さんも行かない。
亀山
子どもは、基本はアトリエに入らないですからね。
――
芝まで敷いて、気持ちよさそうなのに‥‥。
亀山
芝は敷いたけど、上に上がらない。
――
おもしろい(笑)。
中川
でも、意味のない空間がいい。
――
いいですね。意味のない空間。
とっても贅沢な空間(笑)。

京都ならではの建築条件。

――
このおうちは、構想からできあがるまで、
どれくらいかかったんですか?
中川
2年くらいです。
亀山
まず、場所から探してたからね。
中川
そうだね。
亀山
京都市内をいろいろ回ってみたんですが、
このあたりの賀茂川沿いが良かったんです。
中川
場所がようやく決まって、
設計は建築家の友人3人に頼んだのですが、
ワイワイサークルみたいな感じで、
いろいろ話し合ってる間に時間がかかってしまって。
週一くらいで集まってたかな。
亀山
それにね、めちゃくちゃほんまに、
建築条件が厳しいんです。
――
ああ、京都ですもんね。
景観を守るために。
亀山
賀茂川沿いって、京都でもトップクラスに厳しい。
たとえば、うちの屋根は銅なんですけど、
銅か日本瓦しかだめなんですよ。
屋根の角度とかサッシの色とかも、
全部決まってるの。
――
ええー?
亀山
ここって清水寺から見えないのに、
清水寺から見えた時、みたいな項目があったり(笑)。
――
(笑)。
中川
だから屋上は作れない。
真四角で上が屋上みたいなのは、だめ。
亀山
あとベランダも軒で隠さないといけない。
上空から見えた時にだめですって。
ぼくらはなんも考えずに、
例えばイームズの家みたいなのもいいな、なんて。
中川
四角い家、ね。
亀山
ここ、全然だめじゃん、って(笑)。
――
(笑)。
亀山
サッシの枠も茶色か黒にしないといけない。
――
シルバーだめなんですか?
中川
純和風建築を建てなさいっていうことなんですよ。
和風建築を建てるぶんには、
ほんとになんの問題もない基準になっているわけで。
亀山
ここからもうちょっと行ったところだと、
家の前の塀の上に日本瓦をつけなさいっていう。
そういうところもありますよ。
外壁の色もいろいろ制限があります。
中川
外壁を白にしたい場合は、漆喰じゃないと。
――
ずいぶん細かくあるんですね。
でもそうじゃないと、
景観がめちゃくちゃになっちゃいますもんね。
亀山
賀茂川から50m以内は、
風致地区条例っていうのがあるので、厳しいです。
重要ですけどね。
――
でもそのおかげで、
京都の雰囲気が保たれてる。
亀山
古い町家を残そうという動きもあるんですけどね。宿にしたりして。
中川
でもね、やっぱりほんとに京都らしい家は、
だんだんなくなってますね。

思いと憧れをかたちにした家。

――
そして、1階へ降りると‥‥
中川
1階は、プライベート部分ですね。
――
わー、かわいい!
亀山
かなり縦長なんですよ。
――
たのしいですねー。
縦長だし、高低差があるんですね。
これも面白いですねー。
亀山
そこの壁が、ね。
――
あっ、これは、ふすまですか?
木に彫ってあるみたいな。
これはどこかの木工屋さんと?
亀山
いや、これ自分で作ったんです。
木で、裏がシールになってる、
「突き板シート」っていうのを貼っているだけ。
普通に、はさみで切って貼れるんですよ。
――
なるほど。すごい。
彫ったみたいに見えますね。
亀山
「突き板」はけっこうたのしいんですよ。
普通にネットとかで買えて、
いろんな材のやつがあるんです。
カッティングシートの木版ですね。
みんなにおすすめしてる。
――
これはたのしい。
亀山
ここが客間にもなります。賀茂川も見えて。
――
いいですねー。
こういうものは、
住み始めてから徐々につけていったんですか?
亀山
実は‥‥引っ越してすぐ、1週間後に
『Casa BRUTUS』の取材依頼があったんです。
――
そ、それは大変(笑)。1週間はきついですよ。
亀山
『Casa BRUTUS』は2人ともずっと大好きな雑誌で、
本当にうれしかったのですが、
さすがに時間がなく厳しくて、敦子が一度は断ろうとして‥‥。
家はダンボール箱山積みだし。

でも声をかけてくれた『Casa BRUTUS』の方には、
本当にお世話になっていたし、カメラマンさんも大好きな方で。
どうしても受けたくて。
中川
建築家の友人にとっては出来た家は作品だから、
それを『Casa BRUTUS』で紹介してもらえるんだったら、
彼らへのお礼にもなるんじゃないかと思って。
でも3日前ぐらいに心が折れて‥‥。
亀山
でもがんばって、もう、急ピッチで‥‥。
ふすまはもともと、ゆっくり作ろうと思ってたけど、
その取材の間に制作したんですよ。
中川
きれいにするだけだったらいいんですけど、
飾りものとかが足りないっていうか、
はじめは、ないじゃないですか。
だからすごい無理矢理、なんとなく飾り立てて(笑)。
亀山
『Casa BRUTUS』に載るっていうのは、
建築家にとっては重要だと思って。
中川
なんと表紙にもなったんですけど、
それを見ての依頼はあんまりなかったみたいで(笑)。
――
載ったのに(笑)。
亀山
がんばったのに(笑)。
――
キッチンはどうして赤にしたんですか?
中川
キッチンの壁を赤にしよう!というイメージは、
なぜか2人とも共通であって。
亀山
でも、それ以外ほとんどは、敦子のこだわりなんで。
ぼくじゃなくて。
――
(笑)。
亀山
このアーチとかも。
――
階段に上がるところが、アーチですね。
中川
アーチって、女子の憧れですよね(笑)。
アーチの向こうにみえる壁紙をどうしようかも悩みました。
――
憧れますね。うらやましいです。
壁紙とライトも、ピッタリで。
中川
家の模型に実際に色紙をいろいろ貼ってみたりして、
どこにどんな色がきたらいいか何度も検討しました。
あの朱色は、好きな赤なんです。
ふだんから、真っ赤は全然使わなくて、
どうしても朱色になっちゃうんですけど。
――
ちょっとめずらしいけど、きれいですね。
中川
西日が入ってきた時に、
この赤が燃えるようで。
夕方、きれいなんです。
――
なるほど。
亀山
アトリエにも、西日が入るんですよ。
で、僕ら昔から夕方までしか仕事をしないので、
西日はすごい重要です。
――
「もう終わりだよ」という合図。
亀山
そうそうそう。西日、大事。
「もうやめましょう」みたいな。
その西日がすごい好きなんで。
――
家を作るうえでは、そういう部分も大切ですよね。
暮らしとお仕事、両方があるから。
たのしくて、すてきなおうちのご案内、
ありがとうございました。
では、tuperaさんの「いいもの」を
ご紹介いただこうと思います。

(次回、tupera tuperaさんの
「いいものリレー」がはじまります)